「鬼滅の刃」のキャラクターが着ている着物(羽織)の柄の名前・意味・由来を調べました。
吾峠呼世晴さんの漫画作品、『鬼滅の刃』。
「劇場版ー鬼滅の刃ー無限列車編」が爆発的なヒットを飛ばしました。
❝ 鬼になることを選んだ者たち ❞ と ❝ 鬼を討ちたいと強く想う者たち ❞ 、それぞれの切ないストーリーが描かれたこの作品には、何度も泣いてしまい、自分の大切な人の存在を改めて気付かされもします。
そして、着物好きの私にとっては、「鬼滅の刃」に登場するキャラクターたちの着物(羽織)の柄も気になるところ。
「鬼滅の刃」の主人公たちが着ている着物(羽織)の柄は、実は日本の伝統的な柄で、今現在着られている着物や帯などのデザインにもよく使われるお洒落な模様なのです。
こちらの記事では
が着ている着物(羽織)の柄の「名前」と「意味」、「由来」についてお話しさせていただきます。
❝ 模様に込められた願いや意味 ❞ を知ることで、鬼滅の刃の世界をより深く感じることができるのではないでしょうか。
「竈門炭治郎」の羽織の柄の意味
<市松(いちまつ)>
主人公の炭治郎が着ている羽織の柄は「市松」といいます。
市松模様は、2色の正方形を互い違いに並べた格子柄。
炭治郎の家族は皆、この市松模様を身に着けています。
意味:「子孫繫栄」
由来:❝ 柄が途切れることなく続いている ❞ことから、「子孫繫栄」の意味が込められています。
炭治郎一家は代々火仕事をする一族です。炭治郎は父である炭十郎に「この神楽と耳飾りだけは必ず、途切れさせず継承していってくれ。約束なんだ」と言われます。こういった竈門家の先祖代々の思いが、この市松模様には込められているのかもしれませんね。*神楽は神様にささげる歌や踊りです。
モダンな柄行で、着物や帯、半衿などの小物のほか、様々な和装品のデザインにもよく見られ、カジュアルなコーディネートにピッタリです。
江戸時代の歌舞伎役者がはいていた袴から流行した柄で、「市松」の名前もその役者の名前から来ているそうです。
「竈門禰豆子」の着物の柄の意味
<麻の葉(あさのは)>
主人公の妹、禰豆子が着ている着物の柄は「麻の葉」といいます。
麻の葉模様は、麻の葉の形を文様化した、六角形の菱形を結びつけたような幾何学模様です。
意味:「健やかな成長」「魔除け」
由来:麻は成長が早く、まっすぐ長く伸びることから「子どもの健やかな成長を」との願いが込められています。また、虫がつかないことから ❝ 神聖な植物 ❞とされていて、「魔除け」の意味もあります。
炭治郎一家が鬼に襲われたときに、禰豆子はひとりだけ生き延びられ、鬼の血を浴びてもほかの鬼のようにはならずにいます。これは禰豆子が着ていた着物の柄、「麻の葉」に込められた願いのおかげなのかもしれませんね。
赤ちゃんの産着や子どもの着物の柄としてよく使われますが、着物や帯などのデザインにもよく見られ、コーディネートが女性らしい優しい雰囲気に仕上がります。
こちらも、市松模様と同じく、江戸時代の歌舞伎役者の衣装から庶民の間に流行したそうです。
「我妻善逸」の羽織の柄の意味
<鱗(うろこ)>
炭治郎の同僚、我妻善逸が着ている羽織の柄は「鱗」といいます。
鱗模様は、正三角形または二等辺三角形を上下左右に連続して並べた模様で、「蛇の鱗」に似ていることから鱗模様と呼ばれています。(写真は漫画のイラストに合わせて作られたものですので、実際の鱗模様とは少し違います)
意味:「厄除け」「再生」
由来:❝ 蛇が脱皮をする ❞ことから、「厄を落とし、再生をする」という意味があります。鱗には身を守る・固めるといった意味合いもあるようです。
普段はへっぽこな(すみません)善逸は、眠ることで本当の力を解放させます。こういった善逸の性質を鱗模様に込められた「再生」とかけているのかもしれませんね。
帯や長襦袢(着物の下に着るもの)に使われることの多い柄行で、三角形を用いた幾何学模様は洒落感の強いコーディネートが楽しめます。
鱗は世界中で古くから見られる模様です。日本で衣装の模様として使われ始めたのは室町時代からで、武家の陣羽織や能装束などに使われていたそうです。
「冨岡義勇」の羽織の柄の意味
<亀甲(きっこう)>
鬼殺隊の「柱」のひとり、冨岡義勇が着ている羽織の柄は「亀甲」といいます。
その名の通り、六角形を並べた亀の甲羅のような模様です。亀甲を山の形に3つに組み合わせて繋いだ柄は「毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)」といいます。
意味:「長寿」「良縁」
由来:亀は「長寿」の象徴。また、縁結びで有名な出雲大社の神紋にも見られることから、「良縁」も意味します。
毘沙門亀甲は「毘沙門天」が身に付けている甲冑に使われていることから、その名が付きました。毘沙門天は七福神としての印象が強いですが、実は四天王の一人であり、武神・守護神としての顔を持ちます。義勇は初登場時から炭治郎を守る守護神的な存在です。
同じく長寿の象徴である「鶴」と並ぶ、とてもおめでたい柄で、結婚式などのフォーマルシーンで着られる留袖や訪問着、袋帯などによく見られます。
「胡蝶しのぶ」の羽織の柄の意味
<蝶(ちょう)>
鬼殺隊の「柱」のひとり、胡蝶しのぶが着ている羽織の柄は「蝶」です。
胡蝶しのぶの羽織はそれ自体が1匹の蝶であるかのようなデザインになっていますが、普通は蝶の姿そのものが描かれることが多いです。
意味:「健やかな成長」「長寿」「立身出世」「夫婦円満」
由来:蝶は幼虫からサナギの姿を経て成虫へと美しく姿を変えることから「子どもの健やかな成長を」との願いが込められています。また、神秘的な生き物とされ「不死のシンボル」にもなっています。そのほか、天高く舞う姿が「立身出世」を意味し、産卵期にオスとメスが寄り添いながら舞う姿を「夫婦円満」に重ねています。
身軽な胡蝶しのぶは、いつもヒラヒラと宙を舞うような動きを見せます。その際に羽織の模様の入った袖や裾がフワリと広がるので、本当に蝶が飛んでいるかのようですね。また、しのぶは鬼を討つために「毒」を使いますが、モルフォチョウなど毒性を持つ蝶は数種類実在します。蝶のような羽織の柄と攻撃に使われる毒はリンクしているようです。
可憐な蝶は、女の子のお宮参りの着物や振り袖の柄としても人気の高いものです。
「煉獄杏寿郎」の羽織の柄の意味
<火焔(かえん)>
鬼殺隊の「柱」のひとり、煉獄杏寿郎が着ている羽織の柄は「火焔」といいます。
燃え盛る炎を文様化したものが火焔模様です。
昔から火は神聖なものとされていて、悪霊防御に使われてきました。
火焔模様にはこういった呪術的な意味があります。
この火焔模様には煉獄杏寿郎の強い闘志が表されています。ただ、それだけでなく、自分の家族や後輩である炭治郎たちを思いやる気持ちには、焚火のようにじんわりと温めてくれる優しさも感じられます。
力強さを感じる火焔模様は、七五三の男の子の着物などによく見られます。
「鱗滝左近次」の羽織の柄の意味
<青海波(せいがいは)と雲(くも)>
炭治郎の師匠、鱗滝左近次が着ている羽織の柄は、波の形をかたどった「青海波」と、空に浮かぶ雲をモチーフにした「雲」です。
<青海波>
半円を重ねたものを鱗状に並べることで波を表現している模様です。
意味:「平和な暮らし」「永遠に続く幸せ」
由来:絶え間なく続く穏やかな波のように、「平穏な暮らしや幸せが続いてほしい」との願いが込められています。
<雲>
雲の柄にはその形によって「飛雲(ひうん)」「瑞雲(ずいうん)/霊芝雲(れいしぐも)」「雲取り(くもどり)」などがあます。
むかしの人々は様々な形に変化して天候を左右する雲に吉凶の意味を持たせていたそうです。
「青海波」も「雲」も、縁起の良い柄のひとつとされています。
青海波は波の形を模していますが、見た目は鱗のよう。「鱗滝左近次」の名前に含まれる「鱗」にかけられているのでしょうか。ただ、「育手」としての鱗滝左近次は、弟子達にとっては母なる海のような存在。作中の、帰るという約束通り、魂だけになった子供たちは師匠の左近次のもとへ帰ったのだろう、という炭治郎の思いのシーンが印象的です。
「伊黒小芭内」の羽織の柄の意味
<棒縞(ぼうじま)>
鬼殺隊の「柱」のひとり、伊黒小芭内が着ている羽織の柄は「棒縞」です。
「縞」にも縦縞、横縞、斜め縞(縦縞の1種)に格子縞まで、たくさんの種類がありますが、小芭内の着ている羽織の柄は、2色の筋が同じ幅の太い縞柄で「棒縞」といいます。
「縞」が持つ意味は特に無いようですが、着物の柄としてはとてもポピュラーで、男女問わず「粋」な着こなしができます。
「蛇柱」としての伊黒小芭内は、いつも首に「鏑丸(かぶらまる)」という名前の白蛇を巻き付けています。白と黒の棒縞はこの白蛇をイメージしているのでしょうか。
「甘露寺蜜璃」の羽織の柄の意味
<白無地>
鬼殺隊の「柱」のひとり、甘露寺蜜璃が着ている羽織の柄は「白無地」です。
白無地は柄ではありません。ですが、ちゃんと意味があります。
鬼舞辻無惨との戦いに傷つき、命が尽きようとしている伊黒小芭内と甘露寺蜜璃は、来世での愛を誓い合います。
そのとき、蜜璃は小芭内に「また人間に生まれ変われたら、私のことお嫁さんにしてくれる?」と尋ねます。
純白は「花嫁の婚礼衣装」の色。
何にも染められていない白色には、 ❝ あなたの色に染まります ❞ という意味があります。
蜜璃の羽織の「白無地」には、愛する人の傍に寄り添いたい…という想いが込められているのかもしれませんね。
「時透無一郎」の着物の柄の意味
<霞(かすみ)>
鬼殺隊の「柱」のひとり、時透無一郎は、他の柱のように隊服の上に羽織を着ていません。
ですが、鬼殺隊に入る前に着ていた着物には「霞」が描かれています。
春に見られる霧を「霞」といいますが、これを文様化したものが「霞柄」。
特に意味は無いようですが、趣のある柄で、古くから絵巻物や屛風などに使われてきました。
無一郎は「霞柱」ですが、霞柄にはそれだけでなく、むかしの記憶を失い、頭の中が霞がかった状態であったのを表しているようにも思えます。
割付文様と鬼滅の刃
割付文様(わりつけもんよう)は、ひとつの模様を上下左右に ❝ 繰り返した ❞ 柄のことです。
炭治郎の「市松」がそれで、他にも禰豆子の「麻の葉」、善逸の「鱗」など、鬼滅の刃には様々な割付文様が使われています。
鬼滅の刃が伝えたいことのひとつ、「想いこそが永遠であり不滅」。
❝ 想いは受け継がれる ❞ ということが、この永遠と続く割付文様に込められているのだなと思うのです。
自分にとって大切な人に幸せでいてほしいと願う気持ち、その想いは繋がっていくということ。そして、そういった存在があるから自分の人生は幸せなのだと、改めて気付かされたのでした。
羽織の着方
ところで、鬼殺隊の「柱」が隊服の上に着ている羽織。
これは、着物の上に着る「上着」です。
洋装で言いますと、カーディガンのような感じで、防寒の目的もありますが、着物との重ね着コーディネートを楽しみます。
羽織は前があいた状態ですので、「羽織紐」というのを付けて着用します。
羽織紐のデザインには組紐を使ったものや、ビーズやトンボ玉を使ったものなどいろいろあり、アクセサリーを付けることの少ない和装でのお洒落のひとつです。
鬼滅の刃のキャラクターたちは、羽織を着るのに「羽織紐」を使っていないようですが、着物の柄と同様にキャラクターの個性に合ったものが描かれていたら、もっと楽しいでしょうね。
「鬼滅の刃」着物(羽織)の柄の名前・意味まとめ
「鬼滅の刃」のキャラクターたちが着ている着物(羽織)の柄の、名前・意味・由来についてお話ししました。
どの柄も日本の伝統的なもので、今現在着られている着物や帯、そのほか多くの和装品にもよく使われる、お洒落な模様です。
鬼滅の刃ブームのおかげで日本の伝統的な柄が目に付く機会が増えましたが、着物の柄の名前や意味、由来を知ると、着物を着るときも、また鬼滅の刃の作品自体もより楽しめますね。
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最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。
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